健康志向の高まりから、朝食として普及してきた欧米食のオートミール。
オートミールはオーツ麦を加工したものですが、
大麦や小麦、ライ麦なと様々な穀類があり、いまいち分かりづらいと思っている方に、
オーツ麦の特徴や魅力をまとめました。
オーツ麦とは?
オーツ麦は、英語でoat(オート、オーツ)。
イネ科のカラスムギ属、和名は「エンバク」、作物名は「えん麦」です。
分類・学名「Avena sativa L.」、
イネ科には、コムギ属、オオムギ属、ライムギ属があります。
オーツ麦を調理しやすく加工したものをオートミールと呼んでいます。
では、オーツ麦はグラノーラと違うのでしょうか?
「グラノーラ」は、オーツ麦や、麦、玄米、とうもろこしなどの穀物加工品とナッツ類を砂糖や蜂蜜、メープルなどと混ぜてオーブンで焼いて食べやすくしたものです。
オーツ麦は、近年の健康志向の高まりから、食べやすく加工したオートミールとして普及しています。
オート麦はエンバク(燕麦)など多くの別名
オーツ麦は多くの別名を持っています。
エンバク、マカラスムギ、オニカラスムギ、カラスムギ、雀麦(サルムギ)、野麦など様々。
農林水産省の統計資料にはえん麦(エンバク)と記載されているので、日本ではエンバクが正式な名称でしょうか。
しかしながら、「エンバク」では馴染みが薄いので、当記事では「オーツ麦」に統一します。
ちなみに、えん麦は漢字では「燕麦」と書き、この呼称のみ「麦」を「バク」と読みます。
オーツ麦の別名である雀麦やカラスムギは、鳥のエサであったこと、自然界に自生していたと推察できます。
オーツ麦は栽培に手間がかかないことから、日本でも海外と同様に馬などの農耕家畜の飼料として北海道の十勝平野、熊本の阿蘇山ろくでも栽培されてきました。
しかし、軍馬や農耕馬の需要が減少するにつれて、オーツ麦の作付け面積も減少した経緯があります。
オーツ麦の歴史
オーツ麦は麦畑の中で自生する一般的な雑草でしたが、5000年前ごろに作物として進化しました。
野生のオーツ麦が遺跡で初めて発見されたのは、紀元前2600年の初代ギリシャ時代。
穀物として本格的に栽培されたのは紀元前600年、初期の鉄器時代ころと言われています。
原産地は中央アジアやアルメニア地方と言われ、ゲルマン民族も栽培していたことが知られています。
オーツ麦の栽培
オーツ麦の特徴は栽培のしやすさにあります。
寒冷、干ばつ、やせた土壌でも耐えられる作物として広く栽培されています。
オーツ麦の草丈は1メール以上と高く麦畑に自生した多くの雑草から選ばれた穀物です。
北欧などの寒冷地では4月から5月にタネを撒き8月ころ収穫、北海道は同様の栽培時期です。
温暖な地域では秋にタネを撒いて翌年の6月から7月に収穫します。
日本への伝来と用途
オーツ麦が日本へ伝来したのは明治期、ヨーロッパから馬用の飼料として輸入されました。
現在では、北海道で競走馬の飼料用としてわずかに生産されている他、量的には少ないものの食用としても作られています。
食用では、日本食品製造株式会社の「日食 ロールドオーツ」は日本では唯一北海道産のオーツ麦を使用しています。
オーツ麦は栽培が容易で収穫量も多いことから、オーツ麦の実は食用に、麦わらは動物の良い飼料に活用されています。
また、一部は青刈りして高級和牛用の高栄養飼料として活用されています。
更にウイスキーや味噌、お菓子の原料にも応用されています。
他にも、オーツ麦を土に混ぜ込むことで土壌の通気性と保湿性を向上、土壌改良の役割や土壌の害虫駆除効果も期待されています。
日本の栽培量は少なく大半は欧米からの輸入に依存し、1998年の世界農業統計によると日本の輸入量は世界一です。
オーツ麦の用途のまとめ
➀食用
②軍馬、農耕馬、競走馬などの飼料
③高級和牛の飼料
④ウイスキーや味噌、お菓子の原料
⑤土壌改良(通気性や保湿性の向上)
➅土壌の害虫の駆除
など日本では近年、用途が拡大しています。
オーツ麦の食用としての消費量
オーツ麦の世界の生産量は2,621万トンでロシア、カナダ、アメリカなどで多く栽培されています。
食用としては北欧地域の消費量が多く、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、イギリス、ニュージーランドの順番になっています。
ただ、最も消費量が多いフィンランドでも一人当たり年間に3kg、日本の米食に比較するとかなり少ないことがわかります。
中国でも食用として栽培されていますが、その地域が限定されているため一人当たりに換算すると非常に少ないです。
北欧では昔から粥として食用
古くから北欧などの寒冷の地域では、オーツ麦を水や牛乳で煮た粥が庶民の食べ物でした。
当時は、小麦やライ麦などは高級品であり、庶民には栽培が容易で安価だったオーツ麦が普及しました。
その後、ジャガイモの栽培が伝わったことで、食用としてのオーツ麦の需要が減少し、小麦やライ麦も安価で手に入るようになり、更に需要が減少しました。
1800年代に入ってからオーツ麦を脱穀し加熱して押しつぶして調理しやすくした事でロールドオーツ(オートミール)として庶民に普及し好みで塩や砂糖、バター、ジャムなどで味付けして食べられるようになりました。
アマランサス、あわ、大麦、きび、小麦との栄養比較
代表的な穀物である、オオムギ、コムギ、あわ、きび、アマランサスと栄養成分の比較をしました。
栄養比較に日本では余り知られていない「アマランサス」を取り入れた理由は、穀類の中で栄養成分が飛びぬけて高かったからです。
記事内のグラフは、すべて100グラム中の含有量です。
炭水化物、脂質、たんぱく質の含有量比較
下のグラフは「炭水化物」、「脂質」、「たんぱく質」を比較したものです。
6種類の穀物に大きな違いはありませんが、
オーツ麦は「糖質」、「たんぱく質」と「脂質」の三大栄養素がバランス良く含まれています。
銅、亜鉛、鉄、ナトリウムの含有量比較
次のグラフは、「銅」、「亜鉛」、「鉄」、「ナトリウム」どのミネラルの含有量です。
アマランサスの多さが目立ちますが、他の穀物と比較するとオーツ麦も含有量が多くバランスが取れています。
リン、マグネシウム、カルシウム、カリウムの含有量比較
次のグラフは、「リン」、「マグネシウム」、「カルシウム」、「カリウム」などのミネラル分の含有量を示したものです。
こちらでも、アマランサスの含有量の多さが際立っています。
オーツ麦はコムギの次に多いことが分かります。
パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB2、ビタミンB1の含有量比較
次のグラフは、「パントテン酸」、「ビタミンB6」、「ビタミンB2」、「ビタミンB1」の含有量を示しています。
こちらでもあわの含有量が多く、オーツ麦は平均的な含有量になっています。
モリブデン、セレンの含有量比較
次のグラフは、「モリブデン」、「セレン」の含有量です。
こちらは、共にオーツ麦の含有量が際立っています。
モリブデンは体内での代謝や体の中に入った有害物質を分解する酵素の成分として知られています。
食物繊維の含有量比較
「水溶性食物繊維」、「不溶性食物繊維」及び食物繊維総量の比較です。
グラフからコムギ、オオムギに次いで食物繊維が多いことが分かります。
特にオーツ麦の水溶性食物繊維の大部分はβグルカンです。
β-グルカンは免疫賦活作用が報告されています。
オーツ麦の健康効果
オーツ麦は、「全粒穀物」であり、ぬかや胚芽を含むため、食物繊維やミネラル分、ビタミンを豊富に含んでいます。
オーツ麦の水溶性食物繊維の大部分はβグルカンであり、次の健康効果が報告されています。
➀血中のコレステロール値の上昇を抑制する。
②血糖値の上昇を抑制する
③血圧を低下させる。
④排便を促進させる。
⑤免疫機能を調節する。
などの研究結果が欧米を中心に多数報告されています。
1980年代に米国ケロッグ社が米国立がん研究所の認定を受けて、自社製品に「食物繊維の多い食品はある種のがんを予防する」と表示しました。
これを機に米国ではオートミールを食べる人が増加した経緯があります。
オーツ麦の食品、食べ方
オーツ麦を食用に加工したものをオートミールと言いますが、オーツ麦の加工食品は大きく3種類です。
「ロールドオーツ」、「スチールカットオーツ」、「グラノーラ」です。
ロールドオーツ
ロールドオーツはインスタントオーツとも呼ばれ、オーツ麦を脱穀して加熱、押しつぶして調理しやすくしたもので、調理しやすいことからも日本でも広く普及しているタイプです。
還暦を過ぎたころから、ほぼ毎夜、足がつる、こむら返りに苦しんでしました。 就寝中の夜中に突然のこむら返り、痛みと睡眠不足…
スチールカットオーツ
スチールカットオーツは、麦の胚芽や外皮を除去せずに、そのままスチール(鉄)の刀でカットしたもので、プチプチと噛み応えと香ばしさがあります。ただし、調理に時間がかかるデメリットがあります。
寒い朝はの朝食は温かく香ばしいスティールカットオーツのポリッジをおすすめします。ロールドオーツのように押しつぶしていない…
グラノーラ
グラノーラは1800年代に米国で健康食品として開発されました。
その後あまり普及しませんでしたが、1900年代の中盤にオーガニックフードのブームが到来して以来、カフェや食料品店でもグラノーラが売られるようになりました。
グラノーラの優れている点は、栄養のバランスが取れている点、作り置きができる手軽さがあげられます。
グラノーラはオーツ麦を基本として、他の穀物やナッツ類を組合せて簡単にアレンジできるので、自家製のグラノーラを作ってみてはいかがでしょう。
まとめ
今回はオーツ麦についてまとめてみました。
私自身は、パン食から毎朝ロールドオーツやスティールカットオーツに変えてから、体調が改善されました。
特に還暦を超えてから、夜中に足のこむら返りに苦しんでいくしたが、朝食を変えてからほとんど改善しています。
栄養面でミネラル分を不足していたと思います。
ご飯が大好きな日本人にとって、オートミールは今一つ口に合わないという意見も聞きます。
加齢とともに体力と免疫力の低下は必然です。
免疫力を活性化させるβ-グルカンを含むオーツ麦、
栄養のバランも取れているので、シニアの方は一度チャレンジしてみるのも良いと思います。
今、若い人にブームの「腸活」にも一役買ってくれます。やはり日本産のオートミールが安心です。
参照した著書、サイト
「麦の自然史」 佐藤洋一郎・加藤鎌司 編著 北海道大学出版会
「地域食材大百科」 第1巻 穀類・いも・豆類・種実 農山漁村文化協会/編・出版